『マレーシアのBPO(コールセンター)で働けば、
英語が話せなくても海外移住できる!』
このような魅力的な言葉をSNSや求人サイトで見かけた方もいると思いますが、事実、それは本当のことです。プール&ジム付きのコンドミニアムで悠々自適な生活は「幻想」ではありません。
しかし、その一方で「BPOはやめとけ」といったネガティブな声があるのも事実。
私はマレーシアで日系企業のメディア運営に携わり、マレーシアに住んでもうすぐ丸8年。友人を含めて多くのBPO勤務の日本人を見てきましたが、成功する人と「こんなはずじゃなかった」と失敗する人の差は、渡航前に『明確な人生設計や、1年後の自分への出口戦略をイメージできていたか』にあると感じます。
この記事では、マレーシアBPOで働くメリット・デメリットに加えて、求人票には書かれない「3つの落とし穴」について詳しく解説します。この記事を読めば、あなたがマレーシア就職&移住で失敗するリスクを最小限に抑えられるはずです。
BPOとは?
「BPO」とは Business Process Outsourcing の略で、企業が自社の業務の一部(顧客対応や事務など)を、専門の外部企業へ委託することを指します。マレーシアは、政府による外資誘致によって、世界的な「BPO拠点」となっています。現地で募集されている日本人向けの業務は、主に以下の3つが中心です。
- カスタマーサポート(CS): 有名な外資系IT企業(SNS、動画配信、旅行サイトなど)に代わって、日本のユーザーからの問い合わせに電話・メール・チャットで対応。
- コンテンツモデレーション(審査): SNSなどの投稿がガイドラインに違反していないかをチェック・削除する業務。
- テクニカルサポート: ソフトウェアやデバイスの操作方法・トラブル解決をサポート。
雇用されるのは「BPO企業」ですが、旅行サイトのExpediaや、動画配信のYouTube、オンラインショッピングのAmazonなど誰もが知る有名企業の委託業務である場合がほとんどです。そのため、研修制度やマニュアルが完備されており、未経験からでも海外キャリアをスタートしやすいのが特徴です。
マレーシアBPOで働く3つのメリット:「営業職」より高待遇?
マレーシアBPOは、単に「海外で働ける」以上の実利的なメリットがあります。
- 【未経験者歓迎】目的によってはスキルアップが可能
BPO企業での採用について、基本的に日本人であれば未経験者でも挑戦することが可能です。カスタマーサポートの経験がなくても研修マニュアルが充実しており、日本語スピーカーという優位性が強みになります。海外での就労経験や、昇格してマネジメント経験を積むことができれば今後のスキルアップに繋がります。 - 【高給与】他の職種よりも基本給が高い
一般的な現地採用の営業職(基本給RM5,000〜7,000程度)に比べ、BPOは言語手当が厚く、RM8,000〜10,000(約27万円〜34万円)を超える求人案件も珍しくありません。インセンティブに左右されず、初月から安定した収入を得られるのは大きなメリットです。 - 【生活の質向上】日本以上の住環境と可処分所得
この給与水準があれば、プール・ジム・24時間セキュリティ付きの豪華なコンドミニアムに住むことが可能です。日本よりも固定費を抑えることが可能なため、”居住に関しては”贅沢な暮らしが手に入ります。また、税金に関しては給与から所得税とEPF(社会保険:所得の約2%)のみとなり、可処分所得が大きいところが魅力です。
知っておくべき3つのデメリット:契約の「縛り」に要注意
光があれば影もあります。特に「契約面」は渡航前に必ず把握してください。
- 【不規則】シフト制による身体的負担
24時間365日稼働のプロジェクトも多く、夜勤や土日出勤が発生するケースが大半です。有給休暇を使って長期休暇することは可能ですが、プロジェクトの進捗や人員体制によっては希望日に取得できないことも。生活リズムの不規則さが課題となります。 - 【孤独感】ルーティンワークへの飽き・精神的負担
業務は基本的にPCに向かっての電話やチャット対応。マニュアルに沿った地道な作業の連続であることを理解しておく必要があります。また、クレーム処理を担当する場合は利用者から理不尽に怒鳴られたり、侮辱的な言葉で罵られたり、精神的な負担が大きいです。 - 【最重要】1年以内の退職は「違約金」のリスク
BPO企業では「最低1年間の勤務」が契約条件となっている場合が大半です。渡航費やビザ費用を会社が負担しているため、期間満了前に中途退職すると、多額のペナルティ(違約金)を請求される可能性があります。「仕事が合わなかったらすぐ辞めればいい」という安易な考えは禁物です。
重要:マレーシアBPO「3つの落とし穴」
マレーシアのBPO企業で働くメリット・デメリットについてお伝えしましたが、ここでは、「海外就職でスキルアップしたい」「給与の一部を将来のために貯金したい」方に特に注意してほしい3つの落とし穴を紹介します。ただし、働く前にしっかり理解できていれば十分対策できます。
英語力が全く伸びない
「海外で働けば、英語力も上達できる!」
このように語学のスキルアップを見据えて海外就職にチャレンジされる方は要注意。BPO企業では一部英語対応もありますが、基本的に日本語対応の部署に配属されると、仕事相手も同僚も基本的に日本人です。せっかく海外にいるのに「1日中、日本語しか話さず、英語で話す機会がまったくない」という状況に陥るケースが考えられます。ただし、それはあくまでも業務においての場合。英語力を伸ばしたいなら、意識的に外へ出る、ローカルの友人をつくるなど、「自分で環境を整える」ことで、英語力を上達させることは可能です。
突然のプロジェクト終了・解雇
「コールセンターは誰でもできる簡単な仕事」だと思っていませんか?
日本でも高時給なカスタマーサポート職は、マレーシア就職でも大人気。日本語が話せれば未経験から挑戦できますが、安易に考えると痛い目にあいます。業務は単に電話やメッセージで顧客対応したり、動画をチェックするだけではありません。当然ながら厳しい「目標件数(ノルマ)」が存在します。
また、プロジェクトが突然終了し、希望とは異なる部署へ配置転換されるリスクや、パフォーマンス未達による「解雇(クビ)」の可能性もゼロではありません。高待遇の裏には、それ相応のプレッシャーと「離職率の高さ」があることを、渡航前に正しく理解しておく必要があります。
こうした不安を解消するためには、事前準備が欠かせません。面接の際には、採用担当者に「プロジェクトの継続予定期間」や「万が一配属先が変更になった際の具体的な業務内容」を直接確認しておきましょう。あわせて、そもそも自分にカスタマーサポート職の適性があるのか自己分析し、考えられる懸念点を一つずつ払拭しておくことが大切です。
【最重要】キャリアが「行き止まり」になるリスク
「BPOでの海外経験を武器に、次のステップへ挑戦したい!」
そう意気込んで渡航する方が多いと思いますが、ここには最も注意が必要です。言い方は悪いですが、「将来ずっとコールセンターで働き続けたい」と考える人はほぼいないはず。多くの方は「まずはBPOで海外生活に慣れ、そこから転職や起業を目指したい」と考えているはずです。
しかし、ここでシビアな現実を直視しなければなりません。
「コールセンター業務」の専門性は限定的
はっきりお伝えすると、コールセンターでの業務スキルはコールセンターでしか通用しません。目的意識を持たずに働くと、日本帰国時の再就職で「年齢の割に専門スキルがない」とシビアに判断されるリスクがあります。
マネジメント職へ昇進し、チーム運営や部下の育成・マネジメント経験を積めば強力な武器になりますが、それには少なくとも3年程度の継続した実績が求められるケースが大半です。
マレーシア国内での「転職」の厳しさ
マレーシア国内で他業種へ転職しようとする際にも、2つの高い壁が立ちはだかります。
- 就労ビザの壁:
マレーシアで働くには「就労ビザ(Employment Pass)」が必須です。しかし、営業職など職種を変える場合、その新しい職種に関連する「過去の実務経験」や「学位(学歴)」が就労ビザ取得の必須要件となります。 - 給与水準の壁:
前述の通りBPOは給与が高く設定されており、未経験の他業種へ転職すると、年収ダウンが避けられない場合がほとんどです。「スキルアップのために生活水準を下げられるか」という覚悟が問われます。
BPOでの経験を「ただの海外生活」で終わらせるのか、それとも「次への糧」にするのか。渡航前から具体的な出口戦略(次にどう動くか)を考えておくことが本当に重要です。
参考:マレーシア就労ビザの最新要件と制度 マレーシアの就労ビザ制度は頻繁にアップデートされます。国内転職を検討する際は、以下の公的機関の情報で、現在のカテゴリー別の給与要件や申請条件を必ず確認してください。
- JETRO(ジェトロ):マレーシア 外国人就業規制・在留許可 (日本企業向けにビザの種類や要件が日本語で分かりやすくまとめられています)
- Expatriate Services Division (ESD) – 公式サイト (マレーシア政府の公式ポータル。最新のビザカテゴリーやルールを英語で確認できます)
マレーシアBPOを海外挑戦の糧にするために
まず、ここまでの内容を簡潔に。
- メリット: 一般営業職を上回る高水準な給与
- デメリット:配属先ガチャと1年以内の退職に伴う違約金リスク
- 落とし穴: 英語力を活かせない環境と、将来のキャリア形成の難しさ
「ずっとBPO企業で働き続けたい」と考えている方にとっては、まさに天職。ジム&プール付きの高級コンドミニアムで贅沢な生活を送ることは十分可能です。
ただし、注意点もあります。毎日レストランで日本食を食べたい、日本と全く同じ水準の生活を維持したいと考えるなら、BPOの高給与であっても物足りないことは忘れないように。海外では日本食は高級品。仕入れの関係もあり、日本以上に高額になり、海外ブランドについても関税の影響もあり高い傾向にあります。
また、カスタマーサポートは「日本語だから簡単」と思われがちですが、実際は高い目標(ノルマ)があったり、配属先によってはクレーム対応でメンタルに大きなストレスを抱える可能性もゼロではありません。
「英語力」についても同様です。BPOには日本人が多く働いており、友だち作りには困りませんが、語学を磨きたいなら、自らローカルの輪に飛び込む積極的な行動が不可欠です。
もし本記事を読んで少し不安を感じたなら、まずは以下の準備から始めてみてください。
- 自己分析:
「海外で何がしたいのか」「自分にこの仕事は向いているのか」を改めて問い直す。 - エージェントへの相談:
疑問点は人材紹介会社のプロに直接ぶつける。 - 正確な情報収集:
SNSでみられる日本人インフルエンサーのキラキラした側面だけでなく、現地の日系メディアなどを活用して、リアルな生活実態を掴む。
「自分が考えている理想どおりの生活ができるのか」しっかり確認したうえで挑戦すれば、きっと上手くいきます。
マレーシアでの海外就職について、新しい人生の『出発地点』と捉えている人は、その後の人生は劇的に変化します。実際に私の友人でも人生を好転させた方が多くいます。
- 日本にいては出会えなかった、海外志向の刺激的な仲間と繋がる
- 海外在住の「地の利」を最大限に使い、本気で語学力を磨き上げる
- 日本以上の可処分所得を活かし、自己資金を貯める(貯蓄・投資)
想像してみてください。 今の場所で「どうしようかな」と悩み続ける1年と、マレーシアで海外就職に挑戦して、異文化の環境で揉まれる1年。
どちらがあなたの未来を強くしてくれるでしょうか?
たとえ「1年の縛り」があったとしても、その時間を「仲間・語学力・資産」を爆速で手に入れるための自己投資だと決めれば、それはリスクではありません。あなたのキャリアを加速させる最強の「人生のブースト期間」に変わるはずです。
最後に:マレーシア就職を本気で考えるあなたへ
① 現地のリアルな情報をチェック
SNS等で一般の日本人が発信してる情報も参考になりますが、より正確性を求めるなら現地日系メディア「エムタウン」は参考になります。マレーシアに住む日本人(駐在員とその家族・学生・教育移住者・自営業/起業家/フリーランス・リタイア層)に向けて週刊誌で生活・ビジネスに関する情報を発信しており、ウェブサイトや各SNSも運営されています。
② 失敗しないエージェント選び
私が実際にマレーシア転職で活用したオススメの人材紹介会社と、マレーシアにおける求人情報が一括で検索できるサイトをこちらで紹介します。


③ 私宛に直接のご相談も受け付けます
「自分のキャリアでBPOはアリか?」といった専門的な判断は難しいですが、「マレーシア生活や海外生活そのものへの不安」であれば、私の経験がお役に立てるかもしれません。
今のところ大勢から問い合わせが来ることはないので(笑)、DMでの無料相談も対応予定です。マレーシアで働く一人の日本人として、忖度なし・リアルな視点でアドバイスさせていただきます。
皆さまの海外挑戦、マレーシア移住を心から応援しています! というわけで、本日は以上です。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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